まちの植物はともだち

はじめてみよう セミの羽化観察!

昨年から地域の子どもたちと一緒に「セミの羽化観察」をするようになりました。

▲何度みても感動。生き物って凄い(これはアブラゼミ)。

虫のことはほぼ素人に近い私ですが、セミの羽化は個人的にも好きで、なにより子どもたちと自然の神秘に触れる時間が楽しくて幸せなので、これだけは引き受けさせてもらっています。

さて、「セミの羽化」と聞くと偶然の要素が強くなかなか出会えるものでは無いというイメージがありますが、じつは全くそんなことありません。

植物と同じで、セミの羽化もちょっとしたコツで探すことが出来るので、今日は番外編。「はじめてみよう セミの羽化観察!」をお届けします。

都市部でも本当に簡単に見ることが出来るので、ぜひチャレンジしてみてください。大人の方へもおすすめです。

1.まずは観察日時を決める

1-1.観察日の決定

セミはその種類によって、羽化する時期が微妙に異なります。

ニイニイゼミなら梅雨明け後の6月下旬くらいから鳴きはじめ、アブラゼミは7月中下旬から、ヒグラシは7月下旬から8月上旬といったように、少しづつ時期がずれるんですね。

それらを総合して考えてみると、色々な種類のセミの羽化が最も集中するのは7月下旬から8月上旬の間。ちょうど夏休みのはじまり頃がおすすめです。

1-2.観察時間の決定

セミは羽化する際、天敵から攻撃を受けたら反撃能力も逃げる力も持たない非常に無防備な状態に置かれます。

▲なんといっても、この態勢ですからね…。

なので、陽が沈みあたりが暗くなってきた時間にこっそりと外に出てきます。ということで、観察時間は日没後ということになります。

1-3.観察の条件

大雨でなければ、幹の影や葉の後ろなどの雨を避けられる場所で羽化は行われます。

なので、少雨は決行。

むしろ心配なのは風。羽化の最終段階になると、セミの成虫の身体はセミの抜け殻にお尻だけがひっかかるという不安定な状態が続きます。この際に強風が吹くと、羽化の途中でセミが地面に落ちてしまいます。

ずっと見守っていたセミが、途中で地上に落ちると非常にショックなので、強風の時は出来れば避けた方がいいと思います。まぁこれはこれで自然のことなんですけどね。

いちおう、条件としては「少雨決行。強風は中止」としておくといいかなと思います。

2.まず、セミの痕跡を探す

2-1.セミの抜け殻を探す

セミの幼虫は長い間地中で過ごし、ある日「えいやっ」と地上に出てきます。

地上に出てきていきなりたくさん動き回ると、肝心の羽化の際に使う体力が無くなってしまうので、そこまで高い場所にはいきません。

だいたい、地上から30センチ~2メートルほどの高さで木の幹を探すと、セミの抜け殻が見つかります。

これはアブラゼミ。

これはニイニイゼミ。ニイニイゼミは湿ったところを好むため、幼虫が泥をかぶって出てくるのだとか。

こうしたセミの抜け殻が多くついている木があれば、羽化中のセミを見つけられる可能性が高いです。

2-2.セミの幼虫が出てきた穴を探す

さらに万全を喫するために、セミの抜け殻がたくさんある木を見つけたら、その木の下も確認しておきます。

こういう穴がたくさん空いていれば、まだまだこの地中にセミの幼虫がスタンバイしている可能性あり。なおさら可能性が高まります。

3.観察の準備

3-1.絵本の準備

今回は、観察会をとりまとめてくれた方がセミの絵本を用意してくれました。実際にセミの羽化を観察するときには、辺りはすっかり暗くなっているので、観察が始まる前に少しだけ説明をしておくこといいかもしれません。

毎回ちがう絵本を用意してもらっていますが、2017年はこれ↓

2018年はこれでした↓

2冊とも、セミの羽化のことがよく分かる良い絵本です。

3-2.虫除けの準備

蚊、とっても多いです。

3-3.懐中電灯の準備

当然ですが、暗いので懐中電灯をご用意ください。

3-4.踏み台の準備

セミの羽化は30センチ~2mの高さで行われるので非常に観察しやすいですが、もし2mの高さで羽化現場を見つけてしまった場合、小さいお子様にとってはやはり高い位置になってしまいます。

ずっと肩車しているのも大変なので、簡単な踏み台があるといいかもしれません。

4.あとは見るのみ!

ここまで準備すれば、もう成功したようなもの。いざ観察ー!

と、その前に諸注意が。

4-1.観察を始める前に注意事項を伝えておく

観察が始まってしまうと、夢中になり説明が行き届かなくなるので、観察の前に済ませておきたいことがあります。

・注意①:近所の迷惑にならないように静かに観察すること

・注意②:まず足元を懐中電灯で照らし、幼虫が歩いていないかどうか確認すること。(踏んでしまわないように!)

・注意③:懐中電灯をセミに近づけすぎると、羽化途中の体が早く乾燥してしまう原因となり、羽化失敗に繋がるので、遠くから優しく照らすこと。

・注意④:セミには触れぬこと。幼虫のストレス軽減と、非常にデリケートな現象なので、少しでも負荷をかけない状態で観察をしましょう。

4-2.あとはゆっくり観察!

ここまで来れば準備はばっちり。

足元をよく照らして、くれぐれも幼虫を踏まないように気をつけながら地面から出てきた幼虫を探します。

▲いた!アブラゼミを発見!

見つけたら慌てず静かに様子を見守ります。

▲自らで良い場所を探したら、そこでじっと動かなくなるので、様子をうかがっていると背中がパカっと割れて

▲だんだん中身が出てきます。

▲驚きなのが、セミは羽化の途中で真っ逆さまになること。もうお尻しか引っかかっていません。

このとき、たまにこのまま地面に落ちてしまうセミがいるんですが、それを目撃したときは結構大人でもショックを受けます。なのでお子様と一緒に見るときは、失敗することもあると事前に伝えておいた方がいいかもしれません。

それで、このセミがここから腹筋で気合一発起き上がってきて

▲自分の抜け殻に足をひっかけて

▲体を乾かしていくというわけ。

▲ちょっと眺めている間に少しづつ色が出てきます。それにしても何度見ても感動する光景。

今回はたまたま良い場所で羽化しているアブラゼミを見つけたので動画も撮ってみました。

この最後の真っ逆さま状態から起き上がってきて、最後に体を振ってお尻を出すところ。ここが一番の見せ場です。

あとは、セミは体を乾かし切るまでじっと過ごし、明け方には広い大空に結婚相手を探す旅に出かけていくというわけです。うぅん、素晴らしい。

5.おまけ

5-1.幼虫(抜け殻)で、セミの種類を見分ける

羽化を見るだけでも十分ですが、このタイミングだからこそ楽しむことができる観察があります。その一つが幼虫の姿(あるいは抜け殻)で、その種類を見分けること。

さっきも写真を出しましたが、これはニイニイゼミ。

▲泥をかぶっていて小型であることが特徴。これはかなり分かりやすいです。

続いて、ツクツクボウシ。

▲これは体が細くてちょっと長い感じがしますね。

ですが、なかにはちょと難しいものも。

▲僕が苦手なのは、このアブラゼミとミンミンゼミの見分け方。

形はほとんど一緒ですが、どうにも触覚の毛の量や節の長さで見分けるのだとか。いつも挑戦するのですが、うぅむ、なかなかどうして自信がない…。

そんな時は、アブラゼミかミンミンゼミを幼虫の時に推測して、羽化してから答え合わせ!

▲羽化すれば一目瞭然。このセミは羽が透けるミンミンゼミでした。それでは右奥の羽化中のセミはどうかというと…

▲羽が透けていないのでアブラゼミでした!

というように、セミの羽化観察は、幼虫の時から存分に楽しむことが出来ます。

5-2.羽化中にセミの雄雌を見る

セミはどこで鳴くのかというと、口ではなくお腹をふるわせて鳴くのだそうです。その時に使うのが「腹弁」という部分。

セミはオスだけが鳴き、メスは鳴かないので、お腹を見た時に腹弁があればオス、無ければメス。というのがわかるというわけです。

▲うしろあしのすぐ下に、アイマスクみたいな部分があるのが分かるでしょうか。これが腹弁です。これがあるということは、このミンミンゼミはオス。

▲つづいてこちらは、うしろあしの下に腹弁がありません。と、いうことはこのアブラゼミはメス。

セミは羽化したあとしばらく動かないので、普段見えない部分も観察し放題。この機会にじっくり見させてもらうことが出来ます。

と、いう感じで夏といえばセミの羽化観察!あまり意外性のない話題かもしれないですが、案外本腰入れて観察したことがある方は大人でも少ないような気がします。

こうして僕みたいに、普段は植物しか見てない人間でもじっくり観察出来てしまうので、皆さんにもお勧めです。いやぁそれにしても自然は面白い!

**鈴木純、出没情報**

鳥のことなら何でもおまかせの「株式会社 鳥」の社鳥と一緒に「しごとバー」に出ることになりました。

チュンチュンとじゅんじゅんで、身近な野鳥と植物のお話をします。よろしければどうぞ◎

2018.08.18 野鳥と植物が身近にナイト【しごとバー】

https://www.facebook.com/events/232089467443724/

 

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