まちの植物はともだち

透かせば綺麗なトウネズミモチ

今日は僕が好きな樹木の葉っぱをご紹介します。

▲これです。

どうでしょうか、この教科書通りの色形。個性もなにもあったものじゃない恐るべき普通さです。

その名も『トウネズミモチ』!

…名前まで覚えにくいという、まさしく植物入門者泣かせのこの葉っぱ。

▲しかもこの見た目です。近くに生えてても覚える気は起きませんよね。

しかし、しかしです。

そんな普通を絵にかいたようなトウネズミモチにも光輝く瞬間があるのです。

それが、この葉っぱを光に透かして見たとき。

▲どうでしょう!伝わりますでしょうかこの透過光の美しさ!

▲透ける葉脈、白く浮き出た縁取り。

クラスの地味な子が、眼鏡を外したら美人だったみたいな、ギャップで勝負するタイプの葉っぱなんです。

あぁ伝わるかなぁ、この美しさ。ほかの葉っぱはこうはならないんですよ。

ちょっと比較してみましょう。

▲左がトウネズミモチで、右がネズミモチの葉っぱ。

名前がややこしい上に、判別が難しいこの葉っぱを並べて透かしてみます。

▲ほら!どちらがトウネズミモチか一目瞭然ですね。透けている下の葉っぱがトウネズミモチです。

ううん、伝わるかなぁこれ…。とにかく本当に綺麗なんです。これこそ実際に見てみていただきたいなと思います。

そこで、でもこんな樹木見たことないよという方に朗報(とも言えないのですが。。。)。

じつはこのトウネズミモチ、かつて中国からやってきてから、日本でとっても急速かつ広範に分布を広げたので、ほとんどの確率で皆さんのお住まいの近くに生えています。

これかな?と思うものの葉っぱを透かして探していけば、必ずや出会うことが出来るでしょう。

ただし、「わーい透けてて綺麗ー!」なんて呑気に楽しんでばかりもいられないのが、この樹木の一筋縄ではいかないところ。

トウネズミモチは、かつて環境省の要注意外来生物リストに載っていたほど(いまはこのリスト自体が廃止されているそうです)の植物で、本当は日本の生態系への影響などをちゃんと考えないといけない樹木なんです。そもそもトウネズミモチの「トウ」は『透』ではなく、『唐』のことなのだとか。

まったくもう、地味だし綺麗だし要注意だし。なかなか忙しい樹木だな。

あまり増えるのも困りものだけど、こういう一見なんてことはないのに、知れば知るほど色々な話が出てくるこの感じは、植物の面白さが詰まっているように僕は感じます。

面白いことや考えないといけないことは、わりと近くに転がっているもの。そういうものを拾って集めれば、近くで十分楽しめちゃうなと思います。