まちの植物はともだち

他人の空似のエノキとエノキグサ 本当に仲間のクワとクワクサ

植物の名前って、誰かが体系だって付けているイメージがなぜかあるけれど、いやいや案外適当だったりするもんで

▲たとえばこのエノキグサだったら

▲この草の葉っぱが

▲エノキ(樹木です)に似ているから、エノキに似た草でエノキグサという名前がついているというわけなんですが

▲確かにエノキ(樹木の方)の芽生えとエノキグサ(草の方)の姿は似ているかな?

ですが、このエノキとエノキグサ、じつはその科(グループみたいな括り)が異なるのです。

▲樹木の方のエノキは「アサ科(旧分類ではニレ科)」で、

▲草本のエノキグサは「トウダイグサ科」。

▲エノキグサの雄花と

▲この葉っぱの中に包まった変わった形をしたものがエノキグサの雌花。分かる人には分かると思うんですが、いかにもトウダイグサ科といった形をしています。

科の話は始めるとややこしいのですが、要するにエノキとエノキグサは似ているけど違うグループに属している他人の空似なのだということです。

▲じつはエノキグサにはアミガサソウという別名があり、その名前はこの雌花を包む葉っぱを編み笠にたとえたのだといいます。

科が違うなら、エノキとエノキグサじゃなくて「エノキとアミガサソウ」といったように別の名前にしてくれたらよかったのにな、とつい思ったりしますが、わりと植物の名前はそうしたことが多く、名前がその実態をあらわしていないことがよくあります。

そして、エノキとエノキグサの話を書いているとすぐ思い浮かぶのがこの植物。

▲クワ(樹木)と

▲クワクサ(草本)です。

ここまで読んでいただいた方にはもうお分かりかと思いますが

▲このクワ(樹木)の葉っぱが

▲クワクサ(草本)と似ているんですね。

なるほど、じゃあ分かったぞ。するってぇとクワとクワクサも違うグループの植物なんでしょ?

というと、ところがどっこい、クワとクワクサはどちらも同じ「クワ科」なのだといいます!(属レベルでみるとクワ属とクワクサ属で異なってきますが)

なんだ、今度は同じグループなのか。植物…、本当に一筋縄ではいきません。

▲クワクサ(草本の方)の花も面白い構造をしていて

▲この紫色の線状のものが、雌しべの柱頭で

▲この白くてばばんっと開いているのが雄しべたち。

▲雄しべたちは本当にキュートな姿をしていて、ちょこっと我慢できずに出てきてしまった雄しべから

▲ちょこっとずつ開いていったり

▲半分ずつ開いていったりして

▲じゃじゃんっとはじけるように開きます。

うぅん。

じつはこの話、僕が好きなタイプの話なんですが(同じ似ているものなのに、片方の組は違うグループで、片方の組は同じグループだなんて!)、なかなかこの面白さを伝えるのが難しい4種類でもあります。

こういった言葉に出来ていない面白さを伝えられるようになるまで精進しないとなと今日も地を這いつくばる私なのでした。