まちの植物はともだち

ギブ&ギブにも関わらず、ちゃっかり利益を出すヤツデの戦略

寒い寒いと呟きながら家を出ると、いつの間にやらニョキっと顔を出していたヤツデの花。

▲もうこの季節かぁ。そういえばすっかり寒いもんな。

玄関先でいつも素通りしている植物だけど、この時期ばっかりは自然とその足を止めてしまいます。

▲なんてったってほらこの花の形。なかなか面白くないですか。

▲花をアップにすると、小さな花がたくさん集まって丸いボンボンに見えていることが分かります。うぅむ、この花も不思議な形だ。

まだ僕が植物駆け出しだったころ、「よく分からない植物は虫の目線で見てみなさい」と教わったことがあり、これを聞いてから、結構色々なことに気が付くようになりました。

▲まず、虫目線になってみるとヤツデの花は5本のおしべがバンザイをしたユニークな形をしていることが分かります。

▲さらに近寄ると、花の底からたくさん蜜が出ているのが見えてきました。

綺麗だなぁと人は思うけど、きっと虫にとっては美味そう!と見えるのだと想像します。

冬は、他に咲く花が少なくなるので、ハエやアブなどの訪花昆虫にとってヤツデの花はとっても有り難い食糧源。

▲逆にヤツデからしてみれば、他にライバルが少ない冬にあえて花を咲かせることで、訪花昆虫を独り占めできるというウィンウィンの関係を築いているみたい。

ちなみに、ヤツデの花は「雄性先熟」といって、一つの花の中で時間差で雄から雌に性転換をしていきます。

▲これが「雌花」になった時のようす。

▲はじめに写真を上げたこれは「雄花」の時期でした。形が全然違いますよね。

この話も面白いんだけど、長くなるので今回は割愛します。

一つの花の中で、時間差で性を変える植物の話は、ここでも何度か紹介しているので、気になる方はこちらをご覧ください。

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さて、 今回は虫の目線になってみるという話なので、もう少し続けてみます。

ヤツデの花が咲く時期は、あたりの冷え込みが厳しくなってくる季節。

ハエやアブは寒さに強いと聞きますが(ちょっと虫のことちゃんと分かっていませんが…)、それでもやっぱり寒ければ動きは鈍くなります。

そこでなんと、ハエやアブはヤツデの蜜を舐めるかたわら、ヤツデの葉の上で日向ぼっこをして体を暖めているのだとか!

これじつは本で得た知識なのですが、読んだ時は本当かな?と疑ってたんです。そんなに暖かくなるかなぁ、ヤツデの葉っぱって。

なんて思っていたら・・・

▲見えますでしょうか。よく見るとハエが3匹止まっています。えっ、これがまさかの日向ぼっこ…?

これを見て、そういえば!と思い出したんです。冬になると、家を出るときに何故かハエがたくさん飛ぶときがあることを。

なんでだろう、別にハエが来るような生活してるわけじゃないのにな、と思っていたんですが、その後の観察により、玄関を開けた時に舞っているハエは大体ヤツデから飛んできていることが判明。

ハエがヤツデの葉っぱで日向ぼっこ説、これどうも本当みたいです。

そうなってくると、このヤツデの厚くつやつやした葉っぱがなんとなく暖かいような気がしてきます。これいつか実際に温度測定してみたいなぁ。

蜜をあげるだけでなく暖かさまで提供するなんて、なんて至れり尽くせりなのかしら!と、相手を感動させつつ、じつはちゃっかり花粉を運んでもらっているというヤツデの戦略。その見事なビジネス手腕には脱帽です。

▲ヤツデ全貌。どこにでも生えているので、探せばすぐに見つかるはず。

ちなみに、ヤツデは新芽の時期も面白い姿をしています。

とにもかくにも山だって笑う春。寒く長い冬を越え、ようやく芽生えた若い緑はどれも問答無用に美し...
ヤツデの新芽が手を伸ばす - beyond-ecophobia.com

わざわざ虫にならず、人の視線でだって十分に楽しい植物。

よし、僕もこれからヤツデの戦略でもって世間の荒波を乗りこなしていくゾ。