まちの植物はともだち

ヤマブキの色を初めて知ったとき

「ヤマブキ」という植物をちゃんと知ったのは大学1年生のとき。

といっても、まちなかでも出会えるような植物は、ほとんど大学1年生のときに知ったのだけど。(この話はいつか改めて)

この花をはじめて見たときに真っ先に感じたのは、その美しさよりも「これが山吹色かぁ!」という合点だった。

もちろん山吹色がオレンジに近い色だということは知っていたけれど、本物のヤマブキは知らなかったので、はじめてこの花を見た時に、なるほど確かにオレンジ色ではないし、かといって黄色でもない。ふむふむ山吹色と言うしかないなと、いま思い返すとそんなに興奮することかしらと思うようなことを極めて真剣に面白く感じていた。

ヤマブキを知らなかったとき、僕の中の山吹色は想像上の色でしかなかったが、ヤマブキの花を見た瞬間、山吹色が実感を伴って自分の中に現れた。それがとても興味深かったのだと思う。

植物に限らず、そのものを知るということは、その対象を自分の世界に存在させるための第一歩なんだなと、いまはそのように理解している。

さてところで、ヤマブキの花。

まちなかや庭で見るとボテッと咲いている印象があるが、野山では枝がすっと伸び風に揺られている様子をよく見かける。花色が派手だけど、わりに風流な花だと思う。

日本各地で見られる植物のうえ、目立つ花なので昔からよくヤマブキは歌に詠まれていたらしい。

こういう時は万葉集を引用することが多いのだけど、ネット検索をしていたら

桜散り 春のくれ行く物思ひも 忘られぬべき山吹の花

という歌を、藤原俊成が「玉葉集」で詠ったという情報が出てきた。1190年のことだそう。

桜が散って 春が終わる寂しさも ヤマブキの花が忘れさせてくれる

というような意味になるみたい。そう言われれば確かにヤマブキの花を見ると春の終わりを感じ、これから暖かくなるなぁと思う。

いまも昔も同じように植物を見ている人がいると思うと、不思議と気持ちも暖かくなる。

せっかくなので、ヤマブキのつぼみから花が咲くまでの様子を順番に観察。

▲花芽のはじまり。まだ、がくが目立つ。

▲がくが開いて、山吹色の花弁が綺麗に巻いているのが分かる。

▲これがすこしづつほどけて

▲ふくらんでいき

▲あともう一歩で・・・

▲こうして開いていきました。

この花が散るころには、いよいよ初夏に突入。それにしても目まぐるしい季節だな。