先月くらいから、町を歩いているとよく見かける派手な花。
▲主に街路樹や庭木として植えられています。
▲こんな感じの花で
▲遠くに咲いていても、目立ちます。
この樹木の名前は、木の幹を見るとすぐに分かります。
▲猿も滑りそうなくらいツルツルしているので「サルスベリ」。
漢字で書くと「百日紅」。7月から9月くらいまで花が咲くので、百日くらい長い期間咲いている紅色の花という意味。
▲葉っぱはこんな感じ。
さて、このサルスベリ。ぱっと見の印象が派手なので「おっ、サルスベリだ!」と遠くから見て終わってしまいがちなのですが、これまた花のつくりが面白い樹木なんです。
▲正面から見る。なにやら色んな部位がついています。
まずは一番外側のピンク色、しわしわのフリル状のものがサルスベリの花びらです。
ここまではいいとして、真ん中についているごちゃごちゃしたもの。これは何だろう。
▲ななめ横から。どうも雄しべらしきものが2種類と雌しべが1本あるようす。
▲真ん中に黄色く固まっている雄しべと、それよりも花糸の長い雄しべ。
それから、長い雄しべに混じって1本だけある先端が緑色のものが雌しべ(分かるかしら?)。
おっ、形の違う雄しべと書いてピーンと来た。これ、もしやツユクサと同じ戦法なのでは?
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ツユクサも、一つの花のなかに違う形の雄しべを持っていて、それぞれが①花粉を出さず、虫をおびきよせるための装飾としての雄しべ、②花粉を出す交配能力を持つ雄しべ、③花粉も出すし、装飾効果もある雄しべ。とみんな違う役割を持っていました。
サルスベリも、この通りだとすれば
▲この中心の派手な部分が、虫をおびき寄せるか、または虫の餌とする雄しべ。
▲外側の長い雄しべは、交配能力のある「雄しべ」。
ということになるのでは? ということで、いつもお世話になっている日本植物生理学会さんのHP「植物Q&A」を検索。
→1本だけ葯のないおしべがあるのはなぜ? | みんなのひろば | 日本植物生理学会
『サルスベリの花は虫媒花で、ハチやアブの仲間が花粉を運びます。しかし、中央の黄色い葯の花粉は受粉用の花粉ではなくて、昆虫の食餌となります。受粉用の花粉は長い雄しべの葯のものが使われます。中央の雄しべの葯は上を向いていて、昆虫を呼び込みます。昆虫は夢中でこの花粉を集めている間に、長い雄しべの下向きに着いている葯に背中をこすり、その花粉を背中につけます。同時に、やはり下向きについている雌しべの柱頭に背中のの花粉がこすりつくことになるのです。』
とのこと。やはりそうだったのか。
▲この黄色の雄しべはが虫の餌用だったとはねぇ。サルスベリの花の作りもなかなか巧妙だ。
サルスベリは中国が原産地で、いつ日本にやってきたかはどうも不明なのだとか。
ただ、江戸時代の女性俳人の加賀千代女がこんな歌を詠んだそうなので、少なくとも江戸時代にはこのサルスベリの花を日本人も愛でていたみたい。
散れば咲き、散れば咲きして百日紅
この歌を聞いて、あぁ凄いなと思ったのは、この歌がちゃんとサルスベリの花の咲き方を知った上で詠まれているということ。
一つの花が長期間咲き続けるわけでなく、散っては新しい花が次々と咲くというのがサルスベリの花。
▲花の中に、こんな形をしたつぼみがたくさんついています。
次々とつぼみが開いて、ずっと見るものの目を楽しませてくれるんですね。
昔の人も、植物をよく観察していたのだなぁと思うと、嬉しくなります。
▲これはもう一息!
▲見応え抜群。
サルスベリの花も、是非ちょっとだけ近づいて見てみてください。