まちの植物はともだち

女性から男性に性を変えるホオノキの花

昨日、常磐自動車道を北上していた時のこと。一際目立つ大きさの花が道路沿いにたくさん咲いているのに気が付きました。

あら、今年はちょっと早いのかしら、なんて思いながら。

▲ということで、今日はこれ。ホオノキです。

日本では最大級の花を咲かせ、とっても上品な香りがするインパクト抜群の樹木。

▲もしかしたら、この大きなはっぱの方が有名かもしれません。

この花がまた、よくみると面白いんです。

ホオノキの花の寿命は短く、およそ3日間と言われていますが、なんとその短い期間に「女性」の時期と「男性」の時期が入れ替わるのだそうです。

と、言われてもどういうことか分かりにくいと思うので、順番に撮影してみました。

▲まずは、つぼみ。この状態から大きいので驚きます。

▲咲きたては真上を向いて、木に咲く蓮の花のよう。

▲開花1日目の花。花は開ききらず、夕方になると一旦閉じるそう。

真ん中の赤紫色が「雌しべ」で、下の白い部分が「雄しべ」なのですが、赤紫色の「雌しべ」は成熟していて受粉待ちの状態。対して白い部分は熟していないので、まだ花粉は出ていません。

つまりこの状況では、花の性別は「女性」ということ。

▲1日目の花のアップ。雌しべの先端の柱頭がたくさん出ているのがよく分かります。

「花粉よ来い!」という状況。

この花が2日目になると、少し様子が変わります。

▲開花2日目。

真ん中の赤紫色の「雌しべ」が、1日目の写真と比べるとぴったりくっついてしまっているのが分かるでしょうか。

逆に下の白い部分の「雄しべ」が少しゆるんで、花粉を出しています。

▲2日目の花アップ。

この状態で、他の花から花粉が運ばれてきても、赤紫色の「雌しべ」はすでに閉じてしまっているので、受粉は出来ません。

でも、白い「雄しべ」は熟しているので、花粉をどんどん運んでいってもらいたい状況。

つまり、分かりやすく表現してしまうとこの時の性別は「男性」ということになります。

1日目は「女性」、2日目は「男性」ときたら、3日目は?

▲開花3日目。

赤紫の「雌しべ」は依然として閉じたままで、白い雄しべはポロポロと落ちていってしまっています。つまり、もうこの花の寿命が来てしまった状態です。

女性から男性へと性を変え、慌ただしくその寿命を終えていくホオノキの花。

なんだか興味深いけれど、どうしてこのような仕組みになっているのかしら?という疑問が残ります。

じつはこれ、難しい言葉を使うと「雌雄異熟」という方法なんだそうです。

植物には様々な性の在り方がありますが、一つの花の中で「雄しべ」と「雌しべ」が熟するタイミングをわざとずらす植物がいて、雌しべが先に熟する花を「雌性先熟」といい、雄しべが先に熟する花は「雄性先熟」といいます。

ホオノキは「雌しべ」が先に熟するので、「雌性先熟」。

とまぁ言葉の問題はいいとして、どうしてこんな方法を取っているのかと言うと、「女性」の時期と「男性」の時期をずらすことで、同じ花の中で受粉をしないようにしているのだそうです。

もう一度同じ写真を繰り返し。

▲開花1日目(女性の日)。

雌しべは熟していて受粉待ちの状態だけど、雄しべは熟していないので花粉を出せない。

つまり、他の花からの花粉を待っている状況。

▲開花2日目(男性の日)。

雌しべは閉じているので受粉は出来ないけれど、雄しべからは花粉が出ている状態。

つまり、花粉は自分の花の中ではなく、他の花のもとへと運ばれます。

ということで、しつこいですが「女性の日(1日目)」と「男性の日(2日目)」を分けることで、自分の花の中で受粉することを避け、他の花と受粉するように作られているのだそうです。

病気の発生や環境の変化が起きたとき、同じ遺伝子を持つ個体ばかりだと同じようにダメージを受けてしまう恐れがあり、下手をすれば全滅なんてことも起こり得る。

でも、他の花と受粉をした多様な遺伝子を持つ子孫が増えれば、不測の環境変化に耐えられる個体が生き残るかもしれない。というのがホオノキの生存戦略。

惑うことなく華麗に咲いているように見えて、じつは良く考えられているホオノキの花。

みんな苦労して工夫して生きているんだナ。