知っていると思っている植物ほど、よく見てみると知らなかったことだらけ。
たとえば、「オオバコの花ってどーれだ?」と改めて聞かれたら、答えられるでしょうか?
▲正解は、これ!
えっ?どれ?と思った方のためにさらに近付いてみます。
▲このギザギザの白い棒のようなもの。これが花です。
花といっても、これは「雌花」。花びらは閉じている状態で、中から白いギザギザの柱頭だけが顔を出しています。
それでは「雄花」はどれかしらと、探してみます。
▲見つかりました。花びらが開いた中から、先端に花粉が入った葯のついた雄しべがヒラヒラと覗いています。
▲アップ。
遠めに見ていると分かりませんが、じつはこうして「雌花」と「雄花」がちゃんと花を咲かせています。
と、ここまではただ花の様子を確認しただけ。これだけでも面白いけど、もう少し踏み込んでみます。
▲花の全体を見たところ。先ほどみた白いギザギザの雌花が上部についていて、ひらひらの葯がついた雄しべが下部の方についているのが分かるでしょうか。
オオバコは、花を下から上へと順番に咲かせていきますが、まず先に「雌花」を咲かせ、その後を追いかけるようにして「雄花」を咲かせるという時間差戦法を使っています。
オオバコは、雄しべの花粉を風にのせて雌花へ運ぶ植物(風散布といいます)。もしも「雌花」と「雄花」の咲く時期に時間差がなく同時に咲くとしたら、同じ個体の中で受粉をしてしまう可能性があります。
それを避けるため、こうして「雌」と「雄」の時期を分けて花を咲かせるのだとか。
さらに、「雌」から「雄」へという順番も重要。
▲もし雄しべが上にいたら、せっかく花の咲く時期をズラしても、風で落ちた花粉が下の雌しべにくっついてしまいますからね。
▲遠くから見るとなんてことないのに、じつはよく出来ているオオバコの花。
こうして一つの花の中で、性別を変える方法は「雌雄異熟」と呼ばれますが、このブログでも紹介しているホオノキやタチアオイ、ヤツデなども同じ戦略です。
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さて、ここで終わるかと思いきや終わりません。よく見ていると花が終わってすでに実になっているオオバコがちらほら。
▲カプセルみたいになっている果実。
植物の世界ではこのような果実を「蓋果(がいか)」と呼びます。読んでそのまま、フタがある果実のことです。
▲蓋を外すと中から種が出てきます。
▲この種を水でぬらしてみると、(写真だと分かりづらいですが)ジワジワっと少し粘ります。
雨が降ったあとなどに、人間や動物がオオバコを踏んづけると、その足の裏に種がくっつくので、そのまま遠くへと種を運ぶことができるというのが、オオバコの種子散布方法。
▲小さいころ、オオバコの葉っぱをちぎって中の白い筋のようなものを取って遊んだことのある方がいらっしゃるかと思いますが、これにも意味があります。
種を運ぶために「踏まれたい植物」であるオオバコは、踏まれても大丈夫なように組織を強くしています。
植物の体の中で特に大事なのは「維管束」。水分や養分を通す管のことです。
踏まれたいけれど、この管が壊れると生きていけない。なのでオオバコはこの維管束を丈夫にして、ちょっとやそっとのことでは壊れないようにしています。
なるほど~!小さいころの遊びにもちゃんと理由があったのかぁ。
知れば知るほど凄い植物。オオバコ。
身近な植物も、掘り下げてみれば随分と楽しめるものです。
そういえば、前に見たドクダミもなかなか奥深い植物でした。
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*最後にマメ知識*
もしも山で迷ったときにオオバコが目についたなら、オオバコが多く生えている方へと進んでみてください。
オオバコは人に踏まれてその生息域を広げているので、オオバコが多く生えている方に人が住んでいる可能性があります。
…この知識を使う場面はそうそう訪れないと思いますけどね。